【医師コラム①】実は繊細なデリケートゾーン。医師が教える粘膜ケアとは
産婦人科医が教える、デリケートゾーンの正しいケア方法とは? 洗いすぎや間違ったケアは、かゆみや不調の原因につながります。性生活への影響やセクシー女優のケア事情まで、フェムゾーンの美容やエイジングケアに詳しい“あっこ先生”こと宮本亜希子先生が教えてくれました。

宮本亜希子先生
産婦人科と婦人科美容のクリニックの院長を兼業する傍ら、3児の母としての経験を生かし、性教育やHPVワクチンの普及など女性のQOL向上に尽力。ビアンカクリニック、スワンクリニック銀座、シェリークリニック勤務。2024年1月より女性医療クリニックLUNAにて「フェムゾーン美容外来」を開設し、膣のゆるみや黒ずみ、オーガズムの改善など、より良いセックスライフのサポートに取り組む。AVプロダクション「Mine’s」の顧問医師も務める。
女性のデリケートゾーンが繊細な理由
からだの他の部分と比べても、ひときわ繊細なVIOゾーンの肌。トラブルが起きやすいのは、粘膜や分泌腺があり、いつも濡れた状態にあることが原因のひとつです。膣内のバルトリン腺やスキーン腺からは、性交時に必要な潤滑液が分泌されます。
外陰部や肛門付近にある汗腺、アポクリン腺からは、ニオイのある汗が出てきます。しかも常に下着をはいているので外気に触れにくく、ニオイがこもりやすい。私たちが“いつでもノーパン”で生活していたら、これほどVIOゾーンの不快感に悩むことはなかったはず! さまざまな分泌物や尿、経血などが肌につき、下着やおりものシートでさらに密着するという環境が、VIOゾーンをよりデリケートにしているのです。
「女性ホルモン入り」と「洗いすぎ」にご用心
デリケートゾーンの粘膜は「経皮吸収」が起こりやすいと言われますが、正確には経皮吸収ではなく、粘膜吸収と呼ぶべきでしょう。皮膚は表皮だけでも角質層があり、多層構造になっています。ところが粘膜は一層しかなく、バリアが少ないため、ケア用品に含まれる成分が吸収されやすいのです。デリケートゾーン用のケア用品を選ぶ際は、信頼できるメーカーのものを選ぶこと。特に女性ホルモン入りの製品で、医師が監修していないものは避けた方が無難です。
ここで一つ、皆さんに質問です。健康な膣内のpH(ペーハー)は、アルカリ性でしょうか、酸性でしょうか?……答えは「酸性寄り」。腸内と同じように膣内にも常在菌叢があり、健康なときはデーデルライン桿菌と呼ばれる乳酸菌の一種が多く働いています。この状態であれば粘膜のpHは酸性寄りに保たれ、雑菌が腟内で増殖することを防いでくれます。
そのため、デリケートゾーンをアルカリ性の石けんで洗ったり、ゴシゴシとこすったりするのはNG。洗いすぎると常在菌叢が壊れ、カンジダ膣炎による強烈なかゆみや、ニオイなどの原因になります。デリケートゾーンを洗うときは肌にやさしい専用のソープを使い、ふわふわの泡を立てて洗いましょう。その際、粘膜の中まで洗う必要はなく、陰毛が生える部分の周囲だけでOKです。
“名器”は作れる!? 気になるセクシー女優のケア事情
デリケートゾーンの健康は性生活の質にも影響します。トラブルがあると性交痛や不快感から、セックスを楽しめなくなることもあります。
私が得意とするフェムゾーンの施術には、膣のタイトニングや弾力性・潤いを増やす「膣HIFU」や、膣内にヒアルロン酸を注入して感度を高める「膣ヒアルロン酸注入」などがあります。特にヒアルロン酸は奥の深い技術。私はAVプロダクション「Mine’s」の顧問医師を務めているので、女優さんはもちろん男優さんの意見も聞きながら、ヒアルロン酸を注入する位置を決めています。ヒアルロン酸によって膣内のふくらみをコントロールすることができるため、男女ともに満足度の高い“名器”を作ることができるんです。
加齢によるデリケートゾーンの変化も知っておきたいポイントです。更年期以降は女性ホルモンの分泌が減少することで、膣まわりの肌のふっくら感が薄くなり、乾燥、かゆみ、性交痛を感じる女性が増えてきます。閉経後は膣の萎縮も進み、膣内の環境変化から細菌性膣炎も起きやすくなります。
これらは女性ホルモンの低下による自然な変化ではありますが、ホルモン剤の投与や保湿剤の使用、あるいは施術によって症状の改善が期待できます。不快感を和らげたいと感じたら、ぜひ産婦人科で相談してみてください。